Mar 2, 2007

2006 基礎ゼミ・レポート (2007.1提出) K.T.

K.T.さん

韓国の食文化について

1. はじめに

韓国に旅行に行って飲食店に入った 時、多くの韓国人があぐらをかいて食事をしていた。「何て行儀の悪い人たちなのだろう」と思ったが、後から調べてみるとその理由がわかった。食事中の座り 方だけでなく、その他にも日韓では食事作法や料理に関して、少し異なる点があるようだ。

2. 日韓の食事マナーについて

次の表は日韓の食事マナーを表にまとめたものだ。

表1:「日韓の食事マナーについて」
韓国 / 日本

器の持ち方
器は置いたまま / 茶碗は片手で持ち上げる

床での座り方
あぐら / 正座

箸置き
箸おきはなく、お膳のふちに箸をかける / 箸置きに箸を置く

おかずとご飯の順番
おかずとご飯を交互に食べる / おかずとご飯を交互に食べる

目上の人とお酒を飲む時
横を向いて、お酒を飲んでいる姿が相手から見えないように飲む / 向かい合って飲む

食事の時のあいさつ
「いただきます」「ごちそうさまでした」に相当するいい言葉はない / 食べるとき…「いただきます」 食べ終わったとき…「ごちそうさまでした」

もてなしの料理を残す
わざと残そうとする マナー違反
(『韓国の食』より)

日本では茶碗は片手で持ち上げて食べるのが一般的である。しかし『韓国の食』によると、韓国では器を持ち上げて食べるのはマナー違反である。そのためご飯も汁もスプーンで口まで運ぶ。

『韓 国の食文化を知ろう!!』によると、昔は日本でもスプーンを使って食事をしていたそうだ。しかし、日本では木製の食器が、韓国では鉄や陶磁器の食器がそれ ぞれ発達していった。日本では、木製の食器は比較的軽いので持ちやすく手にフィットするように改良され、直接口に運んで食べるようになったためスプーンで 食べるという習慣が消えていった。

一方韓国では鉄や陶磁器が発達していったため、今でも器を置いたままスプーンで食べるというスタイルが残っている。

  また床で食べる際の座り方も日本と韓国では異なる。日本では正座をして食べる。一方韓国では、お膳の脚が少し高く、床とお膳の間に膝を入れるようにしてあ ぐらをかいて食べる。正座は韓国では「罪人の座り方」というイメージが残っているし、「そんなに気を使わなくていいから、気楽に美味しく食べましょう」と いう意味もある。また器を持たないと、正座だと自然に食べる姿勢が悪くなってしまうので、足を崩して食べるのだとも言われているようだ。

そして日本では一般的な箸置きは、韓国にはない。箸を下ろすときは、二本そろえて、持つところがお膳の右端の外に出るようにそっと置く。スプーンと箸の両方を一緒に持たない、という点では日本も韓国も同じである。

ご飯とおかずの食べ方は、韓国も昔の日本と一緒で、ご飯とおかずを交互に食べる。ご飯の代わりにお酒の飲む際も同じく、おかずを食べてお酒を一口飲み、おかずとお酒を繰り返す。

目上の人とお酒を飲む際、日本では向かい合って普通に飲む。しかし韓国では横を向いて相手からお酒を飲んでいる姿が見えないように飲む。この光景は儒教の考え方が残る韓国では、よく見られる。

日 本では食べるときに「いただきます」、食べた後に「ごちそうさまでした」というあいさつをする。韓国では「いただきます」は普通「チンジ・チャプスセ ヨー」と言う。自分より目下の者にそう言われた場合、「分かった」という意味の「オーニャー」とこたえる。お客様にそう言われた場合は「チャルモゲスムニ ダ」とこたえる。「ごちそうさま」は「チャルモゴスムニダ」という。だがこれは「いまからやります」という意味の「チャルモゲスムニダ」が過去形になり、 「よく食べました」という意味に変わっただけである。韓国では「ごちそうさま」に相当するいい言葉はないそうだ。

また日本では、人をもてなすときに出される食事を残すことは、失礼だという考え方が普通だ。従って出された食事は残さず食べる。

し かし韓国人は、出された食事をわざと残そうとする。『韓国の食文化雑学』によると、韓国では人をもてなす食事は、料理の種類と量が大切であるとされてい る。そのため、残さず食べてしまうということは「料理の種類と量が少なかった」というとこを意味してしまうのである。

3. 韓国人と「儒教」

以前、日本人も出演している韓国の映画を見た。年下の日本人が、年上の韓国人の前でたばこを吸うシーンが あった。日本人がたばこに火をつけた瞬間、韓国人は「ここは韓国だ!!」と怒る、というシーンだった。私はそのシーンを見ていて、なぜ韓国人がそこまで怒 るのか理解出来なかった。

日本ではほとんどの人が、道端や年上の前でなど、場所や環境にあまり関係なくたばこを吸う。しかし韓国では、日本と同じではない。

『PUSAN NAVI』によると、韓国人のあいだには儒教の教えが根強くのこっているそうだ。そのため、韓国人は日本人より、両親や先生それに祖父母など、目上の人を 敬って大切にしている。お酒を飲むときや、タバコを吸うときだけでなく、「目上の人が料理に手をつけてから自分も食べる」など、目上の人をたてる行為がい くつかある。

4. 日韓の料理について

「韓国」と聞くと、一番初めに考えるのが「キムチ」だろう。そのキムチは、やはり韓国を代表する食べ物のようだ。

日 本では、キムチはご飯のあてにちょっとだけ食べる漬け物のような感覚で食べられている。しかし『韓国の食』によると「キムチはたいへん中心的な意味を持っ て」いるらしい。お膳にのるキムチは季節によって変わるが、お酒・ご飯・お粥の時それぞれに合うキムチが3種類はつく。だいたいは、水がたくさんある水キ ムチ(ムルキムチ)・白菜だけをつけたキムチ(ペーチュキムチ)・大根だけをつけたキムチ(カクトゥギ)が基本的なものだ。またキムチは漬け物として食べ るだけでなく、それらを利用して野菜がとれない冬の間のおかずを作っている。

日韓共にキムチを漬け物として食べるのは同じだが、韓国ではキムチをおかずに利用したり、「なくてはならないもの」を考えていたりする点では大きく異なっている。

韓 国に旅行に行った時驚いたことは、韓国ではどんな飲食店に入っても、注文しなくてもキムチが付け合せとして大量にでてくる、ということだ。さらにそのキム チはおかわり自由で、韓国人は何度もおかわりをしていた。日本でもたくわんや福神漬けが付け合せとして出てくるが、それらをおかわりする人はほとんどいな い。このことからも、韓国の人たちにとってキムチは「なくてはならないもの」なのだと実感した。

そして日本でもなじみのあるピビムパブ(ビビンバ)も、日本と韓国では食べ方が少し違うようだ。日本人と韓国人の食べ方で一番違うのは、混ぜ方であ る。韓国人は、ご飯と上の具を完全に混ぜる。『KOREA REPORT』によると、韓国人は「混ぜる」という行為が好きなのか、カレーを食べるときでさえ、ルーとご飯をビビンバを食べる時のように完全に混ぜて食 べるようだ。それに対して日本人はご飯と上の具をしっかり混ぜずに食べる。

日本人はご飯粒がつぶれることを好まないので、かき混ぜすぎることを避けるのかもしれない。

また日本でよく目にするピビムパブは、ナムル(山菜などに火を通しあえたもの)以外にご飯の上には牛肉や卵など様々な具がのっている。しかしそれらの具は豪華にするために入れるのであって、一般の家庭ではナムルだけしかのせられていない。

日本では大晦日には年越しそばを食べるのが一般的だが、韓国ではそれに相当するものがピビムパブである。台所にあるものをきれいに食べてしまうために、大晦日の夜中にピビムパブとしてみんなで食べる。

5. キムチの歴史

キムチは韓国人にとって「なくてはならないもの」だが、そのキムチは一体どのように出来上がっていったのだろう。

『キ ムチの雑学』によると、キムチとは「主原料である塩漬白菜に様々な薬味(粉唐辛子、にんにく、しょうが、ねぎ、大根、魚介の干物など)を混合して漬け込 み、製品の保存性と熟成度を確保するため低温で乳酸を生成させ発酵させた韓国の漬物」のことである。韓国語でも、「キムチ」は韓国の漬物の総称である。

農 耕生活が始まったときから、主食となった穀物の栄養バランスをとるため、ビタミンとミネラルが豊富な野菜を食べるようになった。しかし、寒い冬には野菜の 栽培が難しかった。そのため冬場の食生活に備えて、冬になる前に栽培した野菜を長期間保存するため、塩蔵という貯蔵方法が自然と開発されていった。

初 期のキムチは単なる野菜の漬物に過ぎなかった。12世紀からは各種の香辛菜類を加えた独特のキムチが誕生し、16世紀に日本から導入された唐辛子が18世 紀からはキムチに本格的に利用され始めた。19世紀には中身がぎっしり詰まった白菜の栽培が普及し、現在のキムチの姿になった。

世界でもヨーグルトやチーズなどの発酵食品は多いが、野菜を利用したものは多くはない。韓国でキムチが発達した理由として次の3点が挙げられる。

  • 農耕生活を基本としていた先祖たちが野菜を好んで食べた
  • 水産物の塩蔵技術が優れていて薬味として幅広く利用された
  • キムチ用の白菜が広く栽培された

6.おわりに

日本と韓国はとても近い国で、数多くの韓国料理が日本で親しまれている。しかし実際韓国に行ったとき、マナーを知ら ずにとまどったことをよく覚えている。もし何も考えずに食事をして、韓国の伝統を無視するようなことがあれば、韓国人の中での日本人の印象が悪くなってし まうかもしれない。その国の伝統や歴史を知ることは、その国をよく知るために重要なことだ。
「なぜこれをしてはいけないのか」や「なぜこのような形式で食事をするのか」など、理由を知ればもっと韓国料理を楽しめるだろう。


参考文献
『韓国の食』 黄慧性・石毛直進 1988年5月10日

参考ウェブサイト

『韓国の食文化を知ろう!!』 2006年12月7日11時30分
 http://love.u-aizu.ac.jp/~sccp/korean/present002/syokubunka.htm
『ムングンファの庭』 2006年12月7日11時50分
 http://www.wattakatta.com/index.html
『キムチの雑学』 2006年12月7日11時30分
 http://www1.megax.ne.jp/pusantei/jp/korean-food/jk-02-kimuchi.htm
『KOREA REPORT』 2006年12月10日20時15分
 http://www.magicalgate.net/ja/trial/webtrans/korea/magazine/index20050713.html
『韓国の食文化雑学』 2006年12月20日10時00分
 http://www1.megax.ne.jp/pusantei/jp/korean-food/jk-01-korean-food-culture.htm
『PUSAN NAVI』 2006年12月20日10時10分
 http://www.pusannavi.com/index.html

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